権禰宜 岡田桃子2022年8月18日8 分夏のこども真っ黒に日焼けして青いキャップをかぶった、小学1年生ぐらいの男の子がご朱印をもらいに来た。手には渋い御朱印帳。地色が紫色で、金色の火炎模様がドットのようにちりばめられているから、お寺のものであろう。表紙に、ひらがなで自分の名前が書いてある。...
権禰宜 岡田桃子2022年4月10日6 分強剪定からの、屋根の話三月の初めに、本殿横の大木を強剪定(きょうせんてい)した。 と書くと、まるで自分がしたかのようだが、玄人の植木屋さんがクレーン車を操って行ない、その後の手当てもして下さっている。 強剪定とは、太い幹を切って木を小さくすることで、片埜神社では4~5年に一度、順繰りにおこなって...
権禰宜 岡田桃子2021年12月3日8 分ハライドの狼ついこの間まで、腕まくりして汗をかきつつ落ち葉掃きをしていたのが、気がついたら空気が冷たく、軍手が防寒具になっていた。 七五三詣のお子さんたちが、可愛い。 お餅みたいな三歳児に、参拝客のお年寄りが群がっている。私も意識だけそこに参加する。...
権禰宜 岡田桃子2021年10月1日11 分黒革風の手帖七五三の五歳のお祝いを、男女の双子で一緒にしたい、というご相談を受けた。(五歳は男児が袴を履き始める祝いの儀式なのだ)。もちろんさせていただきます、と即答した。私も男女の双子の親だから、その要望の切実さを知っている。 小学校に上がる寸前くらいまで、双子は一緒に遊び、一緒に風...
権禰宜 岡田桃子2021年5月14日12 分生活に実習がある。と、総代さんは言った。ここ一年半ほど、総代さんの寄合いがほとんど無い。世界中で流行っている疫病のせいだ。 神事や祈祷はいつも通り行われているが、祭りなのに総代さんの参列や直会(なおらい)がないと、直会担当の私としては張り合いがなく、心にぽっかり穴が開いている。...
権禰宜 岡田桃子2021年3月21日7 分春に神差す京阪電車大学三回生の巫女Fはとても丁寧で、優しい子だ。 Fがまだ巫女になりたての高校二年生の頃、車のお祓いの説明をしていると、 「桃子さん。車にもお鈴を振ってあげるんですか」と聞くので、 「しないよ。人じゃないから」と答えたが、心の中では「車にも振ってあげようかな」と思った。...
権禰宜 岡田桃子2021年2月1日5 分美智子さまの御歌令和三年一月一日、午前六時。歳旦祭。 久方ぶりに勢ぞろいした二十四名の総代さんに会えた。私はうれしくて柴犬のようにはしゃいでしまい、そのせいで裃(かみしも)を出すのを忘れてしまった。 裃というのは総代さんがスーツの上に羽織る祭り用の装束。(写真は令和元年のときのもの)...
権禰宜 岡田桃子2020年9月1日5 分通り過ぎる夏あたまのてっぺんから足の先まで、夏がいっぱいにつまっている、体のどこを切っても、夏が出てくる、そんなのが夏であるのに、今年は、気が付いたら九月になっていた。 花火大会も、盆踊りも、海水浴もなかった夏が通り過ぎる。 いつもの夏なら、子供たちと一緒に、拾ってきた貝殻に名前をつけ...
権禰宜 岡田桃子2020年7月30日8 分鬼の角に紙泥棒境内の掃除をしていると、鬼の両方の角に、鵯(ヒヨドリ)が一羽ずつ、とまっていた。視力の悪い私は、最初、鬼の角が伸びたのかと思った。 大阪城の鬼門除として豊臣秀吉公から指定を受けた片埜神社には、それに因んでいたるところに鬼面がある。桜の木の横にある赤い鬼面はひときわ大きく目立...
権禰宜 岡田桃子2020年7月15日9 分父の帰幽地球上で、人は刻刻と亡くなり、刻刻と生まれている。 神道では、亡くなることを「帰幽(きゆう)」と呼ぶ。幽に帰ると表現する。 幽の状態って、どういうことだろう。 私の父は五年前の七月十四日に帰幽した。父は東京都台東区谷中の酒屋の四男(六人きょうだいの末っ子)に生まれ、商社に入...