
生活に実習がある。と、総代さんは言った。
ここ一年半ほど、総代さんの寄合いがほとんど無い。世界中で流行っている疫病のせいだ。 神事や祈祷はいつも通り行われているが、祭りなのに総代さんの参列や直会(なおらい)がないと、直会担当の私としては張り合いがなく、心にぽっかり穴が開いている。 たった二年ほど前の、この直会の光景を、遠い昔の、失われた楽園のように感じるのは私だけだろうか。 だが、寂しいと思うのは、それまでが楽しかったからで、そもそも何の関わりもなければ、会えない、集えないという状態を寂しいと感じたりはしないはずだ。 他所から来た嫁である自分を歓待してくれ、冗談で笑わせたり、収穫物を差し入れしてくださったり、昔の牧野について教えてくれたり、喧嘩を仲裁してくれたり、多方面に渡って、いつも楽しみを与えてくれている総代さんに、まずは感謝せねばと思う。 というわけで今回は「総代さんとは何ぞや」、という話から始めたい。 神社における総代とは、読んで字のごとく、氏子(うじこ)の総代表、世話人のことである。氏子とは、その地域に住んでいる人のこと。お寺の総代と区別して、「宮総代(みやそうだい)」とか「氏