おちごさん

最終更新: 2019年5月27日


今年の片埜神社の例祭では、宵宮(10月14日)の午後3時から、お稚児(ちご)さん行列をおこないます。

と、言われても、何のことだか分からない方も、きっと多かろうと思います。私も、神社に嫁に来るまで知りませんでした、お稚児さん。そのいっぽうで、「ああ、私もやったなあお稚児さん、なつかしな~」という方も、たくさんおられることでしょう。

お魚のこどもを稚魚(ちぎょ)と言うように、稚児(ちご)は、「幼いこども」を表しますが、さらに「お」と「さん」をつけて「お稚児さん」と言うと、とたんに関西の風味がしてきます。関西の人は、神社を「お宮さん」と呼び、ほかにも、お日さん、おまめさん、おはようさん等々、なんしか「お」と「さん」をつけて敬意と親しみをいっぺんに表現するのが得意。稚児は神に近い尊い存在であると同時に、親しみいつくしむべき存在ゆえに「お稚児さん」なのでしょうね。

さて、今年の片埜神社の「お稚児さん行列」は、3歳から7歳のこどもが、金蘭衣装をつけ、男の子は烏帽子(えぼし)、女の子は冠(かんむり)をかぶって、牧野阪上公園をぐるりと、行列をなして練り歩き、鳥居をくぐってお宮入りするダンドリです。

片埜神社の場合、宵宮(10月14日)と土日が重なった年にお稚児さん行列をおこなうので、5~6年に一度。ひとりのこどもが「お稚児さん」対象年齢でいるあいだに一回おこなわれるか否か、のペースです。


「しちごさん」と「おちごさん」は、ひらがなにすると一文字ちがいですが、お子たちが身にまとうものが、ちがいます。ひらたく言うと、七五三は「江戸」、お稚児さんは「平安」の世の装束を着ます。

七五三という行事は、徳川綱吉のころ、江戸幕府の世から始まったもので(←くわしくは岡田桃子著「神社若奥日記」あるいは「神社のひみつ」をご参照)、衣装もそのころの着物がベースになっており、対象年齢も三歳は髪置き(かみおき)の儀、五歳は袴着(はかまぎ)の儀、七歳は帯解(おびとき)の儀…というぐあいに、武家の人生儀礼と重なっています。

それに対し、「お稚児さん」の場合は、平安時代の貴族の装束がベースになっており、化粧をする場合も、お公家さん風の化粧をほどこします。年齢も、6歳ぐらいまでと、とくに決まりはありません。別の言い方をすれば、七五三は武家カルチャー、お稚児さんは公家カルチャーが、庶民のあいだに広まったもの、と言えるでしょうか。



祓いをしながら行列の先頭をあるく神職の装束も、そもそも平安時代の公家の装束です。「狩衣(かりぎぬ)」と言って、貴族が狩りをするときの装束だったものが、動きやすいということで、公家の普段着になったそうです。普段着がこれって……貴族ってたいへんですね!

片埜神社のまわり一帯は、平安時代位には広く朝廷貴族が狩りをするお狩場だったので、こうした狩衣の貴族が、馬に乗って往来していたはずなんです。平民は狩りをするべからずという「禁野」という地名がいまも残っているくらいです。貴族らはこの地一帯を「交野が原(かたのがはら)」と呼び、平安京からたびたび狩りをしに来て、そのことを歌に詠んでいます。

狩くらしかた野の真柴をりしきて淀の川瀬の月をみるかな

藤原俊成(新古今和歌集)

けふも早交野のみ野に立つ鳥の行へも見えず狩くらしつつ

足利義詮(新後拾遺集)

またや見ん交野のみ野のさくら狩花の雪ちる春のあけぼの

藤原俊成(新古今集)

ちなみに、古文書や和歌で「かたの」という発音に対して「片野」や「交野」や「片埜」といった漢字があてられていますが、すべて同じ土地一帯をあらわすことばです。

ところで、私もお稚児さんの親として参加した前回のお稚児さん行列は、旧一の鳥居に近い、阪今池公園を出発して公道を練り歩き、階段を上がって南門から宮入りをしたため、どうしても車道にお稚児さんと手をひく保護者、写真を撮るご家族などが入り混じって、ごちゃっとした行列になってしまい、見物の人たちも道にあふれてしまいました。


というわけで、今年は、旧境内地である牧野公園(に集合、公園内の道をぐるりと、一周練り歩いて、東門から宮入りをすることにしました。

ご家族や見物の方は、公園の道の内側(広くて安全)から写真を撮ることができますし、お稚児さんの手をひく親御さんがアウトコースに入っていただければ、内側からはお稚児さんがずらりとならんで歩く、平安時代を幻視したような写真が撮影できるのではないかと……。

果たしてそんなにうまくいくのか!

という気もしますが、保護者目線で見ても、こちらのルートのほうが、子供らにも親にも断然、ストレスがないと思います。

練り歩くときには運動靴でも大丈夫。手をひく親御さんも地味めのスーツで大丈夫。(←よくある質問にここで回答)。

宮入りしたら、御神楽をみて、衣装を返却して、おみやげをもらいます。そのあとのこどもビンゴ大会やまんが映画を楽しむもよし、夜店でベビーカステラを買うもよし。

例祭のときがもっとも、氏神さんの霊力が増すとき、と言われています。それは、われわれ大人よりも、神々に近しい子供たちのほうが、敏感に感じ取る。そんな非日常の雰囲気の中で、非日常の装束を着て、御神楽をみて、祭りを楽しんだ経験は、こどもたちの一生の思い出になるのではないかと、思います。

私事ですが、前回のお稚児さん行列のときは、亡くなった私の父がまだ存命で、闘病中ではありましたが東京から来て、孫とともに行列に参加しました。本人も「これが最後だから」と言っていましたが、あのとき父を呼んでおいて、本当によかったなあと、今、しみじみ思います。

とはいえ、行事の日にかぎって熱を出す、おなかをこわす、ぐずる、といった子どもらとつきあうには、やっぱりこいつらは神なんだからしかたないな、ぐらいの達観が必要ですよね!(わが娘も、装束の冠をむしりとってご機嫌ナナメでした)

日々目のまわるような日常の中で、準備が必要な人生儀礼や伝統行事は、そのときこそ大変ですが、あのときがんばってやっておいてよかったなと、あとからジンワリくるものです。それを経験したこどもたちも、大人になったらジンワリしてくれるはず。と思っています。

かりぎぬにつづくお稚児ら狩りくらしかたのがはらをいまにあらはす

片埜神社秋祭 お稚児さん行列

平成29年10月14日 午後3時 阪上公園を出発~宮入り

対象年齢*3~7歳の男女

参加料 お稚児さんおひとり1万円(金蘭装束貸出し・お神楽奉納・おみやげつき)

申込 以下のいずれかの日にちに、社務所へ直接お申込みください(受付9~16時)

9月24日(日) 

9月25日(月) 

10月6日(金) 

10月7日(土)

☆各地区の宮総代から、「稚児行列ご案内・申込み用紙」を受け取られた氏子さんは、その用紙にご記入の上、上記日付に社務所へお申込みください。

☆定員になり次第、ホームページ、Facebookでお知らせします。申込者多数の場合、氏子さんが優先となる場合がございます。ご了承ください。


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