
毒を食らわば皿までも
毎年、稲荷社の奥で、椿の大木が花を咲かせる。 大木すぎて、上を見上げねば花に気づかず、散り始めて地面に落ちたピンク色を見ては、あ、椿。と思う。 にわかにカメラを持ち出して、黒澤明の映画「椿三十郎」の椿屋敷を連想しながら、椿と土塀のツーショットを写真に収めることに夢中になる。 「椿三十郎」は「用心棒」の続編で、浪人の三十郎(三船敏郎)が、あるお屋敷に身を潜めているときに名を尋ねられ、屋敷の見事な椿を見て「椿三十郎」と名乗る。梅でも桃でも桜でもなく、椿というところがいい。 それにしても、近頃、土塀の傷みが激しいので、いつまでこのような寂びた風景が撮れるのか分からない。私らの代でこの土塀も再建せねばならないだろう。 そんなわけでこの季節は椿に執心していて、他の花にはまったく目がいかなかったのだが、実は赤門を入ってすぐの目立つ位置に、可憐な花を咲かせている植物があった。 社務所の玄関にも近いのに、興味がなかったために無視し続けてきたが、寄ってみると鈴蘭のようなこまかい花が連なっており、洋風に見える。 ちょっぴり南国テイストも、無きにしもあらず。 稲荷社の