
眠れぬ夜と人生儀礼
片埜神社がある大阪では、お宮参りは、生後およそ一か月で行われるのが習わしだ。 もともとは、産屋(うぶや)で生まれた赤ちゃんが、初めて外に出て氏神さんにご挨拶に行くという日であるので、赤ちゃんの額には魔除けの印として朱(現代では口紅)で「大」や「小」の字が書かれる。神社につくまでの道中、魔がつかないようにとのおまじないである。 神社に到着し、初宮詣の祈祷を済ませると、氏神さんは産土神となり、そのお子を守護するので、もう魔除けの印は必要ない。 という、古来の人生儀礼なのだが、なんらかの事情で、生後三か月、生後半年、といった月齢で初宮詣に来られる赤ちゃんもいる。 暑すぎる時期、寒すぎる時期を避けていたらそうなった、という場合もあるが、たいがいは、その赤ちゃんが、外に出られるようになるまで、それだけの月日がかかったということが多く、母親たちは眠れない日々を過ごしていたのである。 私もそのひとりだった。 双子はたいがい、産み月よりひと月かふた月は早く生まれてくる。合計の重みに母体が耐えられないためである。 早く生まれた赤ちゃんは体が小さく、そのぶん胃も小さ